編著者:韓国民衆史研究会
訳者:高崎宗司
ジャンル:韓国近代史・現代史
四六判(タテ188mm×ヨコ128mm) 上製本 540頁
定価:本体4,300円+税
ISBN 978-4-89618-022-4 C0022
1998年9月18日発行
装幀:菊地信義
韓国の民主化運動を担った気鋭の歴史家たちが、民衆が歴史の主体であるという観点から記述した通史『韓国民衆史』Ⅰ・Ⅱ巻から、Ⅰ巻「前近代篇」の序説「望ましいわが国の歴史の理解のために」と、Ⅱ巻「近現代篇」を合わせて翻訳したもの。全2巻の原書の約4分の1にあたる。旧版の「現代篇」は1987年8月に、「近代篇」は89年4月に翻訳出版した。
「定本」はその2冊を合わせて一冊とし、巻末に「索引を兼ねた近現代史年表」を加えた。
なお、『韓国民衆史Ⅰ巻――前近代篇』は未邦訳である。
この通史では「近現代史にできるだけ多くの紙数をさき、内容の充実を期した」ことが述べられている。とりわけ、1945年以降の現代史が重視されているのは、それまでの歴史家が現代史の研究を避けてきたことへの批判でもある。現代篇では、70年代の民主化運動を80年の光州民衆抗争が詳しく取り上げられている。
本書は新しい視点から韓国史を書き替えたという評価と、民主化運動を担う大学院生によって書かれたという点から、青年・学生層に争って読まれたが、序説と現代篇の内容に問題ありとされて、発禁処分とされ、出版社代表が逮捕され、裁判にかけられた。
これに対して、日本では、訳者を含む朝鮮史研究者19人が「意見表明」を行い、日本でも裁判に関心が集まった。その経緯は訳者解説に詳しく紹介されている。
▶︎目次
この本を読む人へ
序説 わが国の歴史の望ましい理解のために
近代1――近代の胎動と帝国主義の侵略
第1章 近代をめざした民衆的世界の発展
第2章 帝国主義の侵略と支配層の対応
第3章 自主的近代化のための民族運動
第4章 植民地化と民衆の抵抗
近代2――植民地時代
第1章 武断政治と三・一民族解放運動
第2章 文化政治と民族解放運動の昂揚
第3章 植民地体制の終末
現代――統一民族国家の樹立のために
第1章 解放と分断
第2章 四月革命
第3章 軍部独裁の登場と隷属資本主義の発展
第4章 維新体制と民衆運動の成長
訳者解説
資料――『韓国民衆史』についての意見表明
索引を兼ねた近現代史年表
▶︎著者プロフィール
編著者の韓国民衆史研究会は、1984年6月、ソウル大学・延世大学の国史科を出たばかりの若い歴史学徒たち(ソウル大学大学院生ら)によって結成された会で、メンバーにより分担執筆されている。そのため、原書では執筆者名は明かされていないが、出版社プルピッ(「灯火」の意)社の代表が国家保安法違反で逮捕された裁判の過程で、分担執筆の内容が明らかにされた。それによれば、原始・古代篇を姜ヨンイル、中世篇を崔民と金ソンジ、近代篇を李善姫(イ・ソニ)とチョ・ギョンスク、現代篇をユ・ギホンが分担執筆している。
「そうした若い人たちが書いた本だからであろう。本書は、何よりもまず、民衆の闘いをいきいきと描いている。のみならず、実践的な姿勢をもつ者のみがもつ鋭い批判的な視線で、過去の闘いの問題点を明らかにしている。読者はその意気込みを感じることをとおして、1980年代の韓国の青年・学徒たちが何を目ざして闘っていたかを知ることができるであろう。」(「訳者解説」より)
▶︎訳者プロフィール
高崎宗司(たかさき そうじ)
1944年、茨城県水戸市に生まれる。東京教育大学卒業。出版社勤務を経て、2013年まで津田塾大学国際関係学科教授を務める。専門は日本近現代史・朝鮮近現代史。主な著書に、『朝鮮の土となった日本人』(草風館)、『「反日感情」韓国・朝鮮人と日本人』(講談社)、『検証 日韓会談』『植民地朝鮮の日本人』(ともに岩波書店)など。ほかに韓国の小説などの翻訳多数。