花綵列島

民俗と伝承

品切れ・重版未定

著者:高城 隆


ジャンル:民俗学/沖縄学
四六判(タテ188mm×ヨコ128mm) 上製本 304頁
定価:本体2,200円+税
ISBN 078-4-89618-014-3 C0036
1995年8月1日発行
装幀:望月通陽


沖縄を中心に日本各地を訪ね、人びとの暮らしを豊かな想像力をもって考察した記録を集め、ユニークな花綵列島論を展開する。パナリ焼のこと、刺青から見た沖縄文化論、星見様の研究、講と一揆考などを考察。

▶︎本文1章「花綵列島の島々」より
 花綵(はなづな・かさい)列島とは、アジア大陸の東側に、東北から西南にかけて細長く、南北4000キロメートルにわたって連なる、数千の島々のことである。それらは、ふつう、千島列島、日本列島、琉球列島と、呼ばれている。
 遠い日に、野原で摘んだれんげの花で作った花の輪、それを広げて、両手で持ったときにできる弧の形が、数千の島々が形づくる弧の形と似ていることから、これらの3つの列島を総称して「花綵列島」と呼ぶことがある。私は、その花綵列島の最西端、八重山群島の与那国島から、旅を始めてきた。そして鳩間島、波照間島と歩き、いま石垣島を去ろうとしている。
 しかし、これで八重山群島の旅が終わったわけではない。それどころか、同じ島、同じ村、同じ道を何度歩いても、同じ風景に出会ったことがないのだ。今日見る風景は、いつも昨日の風景と違っている。見たことのある風景でも、いつのまにか見知らぬ風景に、変貌してしまうのである。私にとっての八重山群島の旅とは、ちょうど「メビウスの帯」の上を歩いているようなものだ。いくら歩いても、果てがないのである。



▶︎目次
1
花綵列島の島々
パナリ焼のことなど
刺青から見た沖縄文化論
デイゴ
沖縄ユタ論争
みみらくの島
古琉球研究の諸問題
累卵の時代――新聞に見る山梨と沖縄

2
『星美様』の研究――沖縄・多良間島の星伝承

3
民話世界への傾斜
祭のあとの祭
講と一揆考――秩父事件を中心に
毎日正月
千国の年中行事
飛騨古川の消えた村
飛んだ首
星たちの軌跡
川上音二郎と電話
縁日のバナナ売り
スペインと延安を結ぶもの

あとがき  アン・ヘリング

▶︎著者プロフィール
高城 隆(たかぎ  たかし)
1949年1月1日、山梨県北都留郡上野原町に生まれる。法政大学法学部卒業。高校生の頃より日本各地を旅し、歴史・民俗に興味を持つ。1969年東南アジアからの帰途、返還前の沖縄にたち寄り、そこで決定的な影響を受ける。以来、沖縄の島々を訪ね歩くこと十数回。沖縄学のみならず、民俗芸能、石仏、自由民権運動、電気通信など多分野にわたり独自な関心を持ち続けるが、1988年心不全により急逝。NTT社員。
著書に『歌手――その青春の位相』(木犀社)がある。