歌手

その青春の位相

品切れ・重版未定

著者:高城 隆


ジャンル:歌謡論
四六判(タテ188mm×ヨコ128mm) 上製本 284頁
定価:本体2,200円+税
ISBN 078-4-89618-013-5 C0073
1995年8月1日発行
装幀:望月通陽


歌は世を映し出す鏡。演歌、フォーク、ロック、ポップス。松田聖子、谷村新司、中島みゆきなど、70年代、80年代の歌手たちの青春を描いて、鮮烈に時代を読み解く一冊。

「あとがき」(松田修)より
 1979年、一連の歌謡曲論を以って甲州の人、高城隆はデビューした。舞台は「全電通文化」誌。
 決して燦やかでもない。でもアノニマスな青年にとって、ふさわしい場であった。
 (中略)
 いまだに信じられないぐらいに隆氏はシャイなのだ。彼が、歌謡論を書くということが信じられない。必ずしも短いとはいえない交友私史をいくらふりかえっても、私は彼が歌うのを聞いたことがない。
 別段、歌謡曲に限らない。寮歌でも革命歌でもコマーシャルソングでも、かつて聞いたことはない。
 夜の那覇、国際通りで知り合った多良間育ちの青年が、南島浜をうたう。絶好の舞台装置であるが、彼はうたわなかった。
 「肉体=生理としてのうた」をうたわず、歌謡曲を評論するとはあ、一体どういうことであろうか。
 「歌謡曲論のための方法論」ともいうべく、隆氏は、おどろくべき歌謡曲論のためのマニュアルを提示する。曰く、
  古賀政男なきあと「独立」した森進一は、新しい一歩をどこから始めるべきだろうか。
  五木ひろしはあまり好きでないので論じない。
 歌謡曲からことばを締め出すことで、はじめて評論が始動するのである。


▶︎目次
歌手、その青春の位相
君は、光明を求めて闘うのか
山口百恵と「曼珠沙華」

〈現代歌謡曲横断〉
鳥たちの疾走  近藤真彦
めぐる季節の人の世に  松田聖子
幻影の日本回帰  谷村新司
短き春の間に  井上陽水
遅れてきた女たちの天使  中島みゆき
狂的なるものの曳光  ロックンローラー論
妣が国へ  中森明菜
ライク・ア・ローリングストーン  五輪真弓
「公序良俗」を越えて  加藤登紀子
舟を漕ぎ出すもの  吉田拓郎
原郷への遙かな旅  火野正平
北極星  中原理恵
うた・幽顕の懸橋
星への疾走  郷ひろみ
それから  松山千春
東北・東国の連帯を求めて  寺山修司(一)
身を不平不和む  寺山修司(二)
匕首流離譚  寺山修司(三)
ちょっとピンボケ  田原俊彦
姿花江戸伊達染  小泉今日子
歌に潜む殺意  桑田佳祐
歌謡曲にとって「東京」とは何か  堀ちえみ
天路歴程  渡辺はま子
乱逆  岩崎宏美
少年と少女の彼方へ  河合奈保子
正札附根元草摺  沢田研二と萩原健一
跳梁する闇  安全地帯
コペルニクスの回廊  阿久悠
詐術  秋元康
など

あとがき  松田 修


▶︎著者プロフィール
高城 隆(たかぎ たかし)
1949年1月1日、山梨県北都留郡上野原町に生まれる。法政大学法学部卒業。高校生の頃より日本各地を旅し、歴史・民俗に興味を持つ。1969年東南アジアからの帰途、返還前の沖縄にたち寄り、そこで決定的な影響を受ける。以来、沖縄の島々を訪ね歩くこと10数回。沖縄学のみならず、民俗芸能、石仏、自由民権運動、電気通信など多分野にわたり独自な関心を持ち続けるが、1988年心不全により急逝。NTT社員。
著書に『花綵列島――民俗と伝承』(木犀社)がある。