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民族大国インドネシア

文化継承とアイデンティティ

編著者:鏡味治也


A5判(タテ210mm×ヨコ148mm) 上製本 365頁
定価:本体3,800円+税
ISBN 978-4-89618-060-2 C3030
2012年9月25日発行
装幀:菊地信義


千にものぼる民族の多様な文化をもつインドネシア。スハルト政権崩壊後、解き放たれ、新たに生成し変化する民族意識を、9人の研究者たちが探る。建国以来初めて民族別人口を明らかにした2000年のセンサスをもとに、赤道にまたがる無数の島々からなる広い国土の各地域に密着し、各民族の多彩な営みをとらえた論考は、幾多の困難を乗り越え政治の安定を得て経済成長を促し、いまや上昇局面に立つ国の、活力の源を知る確かな礎となる。

日本の自動車メーカーすべてがインドネシアに工場進出。ビジネスマンの赴任数も激増し、インドネシアへの経済的関心が高まっている。やや専門的な内容ではあるが、学生、研究者、ビジネスマンなどの社会人に、急速に変化するインドネシアの国情を知る手がかりとなる一冊。


▶︎目次:[ ]内は執筆者
別刷りカラー口絵:インドネシアの民族分布図 [長津一史]

序 インドネシアの国民意識と民族意識 [鏡味治也]

コラム インドネシアの2000年センサスと民族別人口 [長津一史]
 
1 アイデンティティの拠り所
  ――受け継がれるスンダ語教科書からの考察 [森山幹弘]
 
2 都市の家族、村の家族
  ――バリ人の儀礼的つながりの行方 [中谷文美]
 
3 バティックに染め上げられる「華人性」
  ――ポスト・スハルト期の華人と文化表象をめぐって [津田浩司]
 
4 受け継がれた罪と責務
  ――西ティモールにおけるキリスト教と祖先崇拝 [森田良成]
 
5 コラージュとしての地域文化
  ――ランプン州に見る民族から地域への意識変化 [金子正徳]
 
6 慣習継承の政治学
  ――スマトラ2州に見る公的プロジェクトの限界 [岡本正明]
 
7 異種混淆性のジェネオロジー
  ――スラウェシ周辺海域におけるサマ人の生成過程とその文脈 [長津一史]

8 首都に暮らすバリ人ヒンドゥー教徒 [鏡味治也]
 
9 ジョジョバ(幸せな独り者)
  ――都市部におけるキャリア女性の食行動とジェンダー規範の変容  [阿良田麻里子]


▶︎執筆者プロフィール[2012年時点]

■鏡味治也(かがみ はるや)
1954年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程中退、博士(学術)。金沢大学人間科学系・教授、文化人類学。
主な著作に『キーコンセプト 文化』(世界思想社 2010年)、『バリ島の小さな村で』(洋泉社 2004年)、『政策文化の人類学』(世界思想社  2000年)などがある。


■森山幹弘(もりやま みきひろ)
1960年生まれ。ライデン大学大学院(D. Litt. 文学博士)。南山大学外国語学部・教授、インドネシアおよびスンダの文学・文化史。
主な著作に Sundanese Print Culture and Modernity in 19th Century West Java(NUS Press  2005年)、 『多言語社会インドネシア――変わりゆく国語、地方語、外国語の諸相』(共編著 めこん2009年)、Geliat Bahasa Selaras Zaman: Perubahan Bahasa-Bahasa di Indonesia Pasca-Orde Baru(共編著  KPG  2010年)、 「インドネシアにおける多言語状況と『言語政策』」砂野幸稔編『多言語主義再考――多言語状況の比較研究』(三元社  2012年)、Words in Motion: Language and Discourse in Post-New Order Indonesia (共編著   NUS Press  2012年)などがある。


■中谷文美(なかたに あやみ)
1963年生まれ。オックスフォード大学大学院博士課程修了(D.Phil.)。岡山大学大学院社会文化科学研究科・教授、文化人類学。
主な著作に『〈女の仕事〉のエスノグラフィ――バリ島の布・儀礼・ジェンダー』(世界思想社  2003年)、『ジェンダー人類学を読む』(共編著  世界思想社  2007年)、「『わたしの布は誰のもの?』――インドネシア伝統染織の〈ファッション化〉をめぐって」『社会人類学年報』33号(2007年)、「開発の中の女性と家族――インドネシア・新秩序体制下の女性政策」長津一史・加藤剛編『開発の社会史』(風響社  2010年)などがある。


■津田浩司(つだ こうじ)
1976年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了、博士(学術)。東京大学大学院総合文化研究科・准教授、文化人類学。東南アジア島嶼部の華人の社会や宗教について研究をしている。
主な著作に『「華人性」の民族誌――体制転換期インドネシアの地方都市のフィールドから』(世界思想社  2011年)、「今、ジャワの寺廟で何が起こっているか――ポスト・スハルト期インドネシアの国家、宗教、コミュニティ」『アジア・アフリカ言語文化研究』79号(2010年)などがある。


■森田良成(もりた よしなり)
1976年生まれ。大阪大学大学院人間科学研究科博士後期課程修了、博士(人間科学)。摂南大学外国語学部ほか非常勤講師、文化人類学。インドネシア、西ティモールの農民の、経済と社会の変容について研究している。
主な著作に「貧乏――『カネがない』とはどういうことか」春日直樹編『人類学で世界をみる』(ミネルヴァ書房  2008年)、「村人たちとストリート」関根康正編『ストリートの人類学』(国立民族学博物館  2009年)などがある。また映像作品に「アナ・ボトル――西ティモールの町と村で生きる」(2012年、ゆふいん文化・記録映画祭第5回松川賞受賞)がある。


■金子正徳(かねこ まさのり)
1972年生まれ。金沢大学大学院社会環境学研究科修了、博士(文学)。国立民族学博物館・外来研究員、三重大学人文学部・非常勤講師、文化人類学。コトとモノの消費に関心をもちながら研究を進めている。
主な著作に『インドネシアの学校と多文化社会――教育現場をフィールドワーク』(風響社 2011年)、「婚姻に見る民族集団間関係とアダット(慣習)――インドネシア・ランプン州プビアン人社会の事例から」『国立民族学博物館研究報告』32巻3号(2008年)、「アダット(慣習)とクブダヤアン(文化)――インドネシア・ランプン州プビアン人社会における婚姻儀礼の事例を中心として」『文化人類学』72巻1号(2007年)、「インドネシア新秩序体制下における〈地方〉の創造――言語・文化政策とランプン州の地方語教育」『東南アジア研究』40巻2号(2002年)などがある。


■岡本正明(おかもと まさあき)
1971年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程(単位取得退学)、博士(地域研究)。京都大学東南アジア研究所、東南アジア政治。
主な著作に「政党、候補者の〈創造〉――民主化と選挙コンサルタント業」本名純・川村晃一編『2009年インドネシア総選挙と新政権の行方』(ジェトロ・アジア経済研究所 2010年)、 Islam in Contention: The Rethinking of Islam and State in Indonesia (共編著  CSEAS, CAPAS and Wahid Institute  2010年)、「逆コースを歩むインドネシアの地方自治――中央政府による〈ガバメント〉強化への試み」船津鶴代・永井史男編『東南アジア――変わりゆく地方自治と政治』(ジェトロ・アジア経済研究所  2010年)などがある。


■長津一史(ながつ かずふみ)
1968年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程(単位取得退学)、博士(地域研究)。東洋大学社会学部・准教授、文化人類学・東南アジア地域研究。
主な著作に『開発の社会史――東南アジアにおけるジェンダー・マイノリティ・境域の動態』(共編著  風響社  2010年)、「〈正しい〉宗教の政治学 マレーシア国境海域におけるイスラームと国家」加藤剛編『変容する東南アジア社会――民族・宗教・文化の動態』(めこん  2004年)などがある。


■阿良田麻里子(あらた まりこ)
1963年生まれ。総合研究大学院大学文化科学研究科博士後期課程修了、博士(文学)。東京工業大学「ぐるなび」食の未来創成寄附講座・特任助教、文化人類学、言語人類学、食文化研究。
主な著作に『世界の食文化 6 インドネシア』(農文協  2008年)、『食料と人間の安全保障』(大阪大学GLOCOLブックレット  上田晶子編  2010年)、『テーマ研究と実践 食からの異文化理解』(河合利光編  時潮社  2006年)、『くらべてみよう! 日本と世界の食べ物と文化』(共著  講談社 2004年)などがある。