著者:ヘレン・コレイン
訳者:西村由美
ジャンル:ノンフィクション/現代史
四六判(タテ188mm×ヨコ128mm) 上製本 325頁
定価:本体2,400円+税
ISBN 978-4-89618-027-5 C0023
2001年10月20日発行
装幀:菊地信義
ヴォーカル・オーケストラ、器楽曲を声で奏でる音楽。その独創的な音楽は、収容所での女性たちの不安と苦しみに耐え美しさを求める心から生まれ、生きのびる命の綱となった。
「日本の読者へ」
私の本の翻訳が日本で出版されると聞いたとき、とてもうれしく思いました。原作は
DE KRACHT VAN EEN LIED(歌の力)という題名で、オランダ語で書きました。その後、SONG OF SURVIVAL(生きるための歌)という題名で英語でも出版しました。
この本は、第二次世界大戦中にインドネシア(当時オランダ領東インド)を占領していた日本軍の強制収容所に3年半の間入れられていた、オーストラリアとイギリスとオランダの女性や子どもたちが作った、小さな合唱団についての話です。その合唱団は、世界的なクラシック音楽の作品のいくつかを、歌詞のない歌にしました。空腹と病気と死に満ちた環境の中で、その音楽は、歌い手と聴き手の両者を力づけ、勇気を与えてくれました。
この本が日本語に翻訳されることで、さらにたくさんの人たちに、この音楽とその背景の物語について知っていただけることをうれしく思います。そしてこの物語とその歌が、いまなお今日の世界の国境を超える力を持っていることを確信しています。
いつの日か、日本の少女や女性たちにこの音楽を歌ってもらいたい――それは私が長い間、心に懐いている願いです。
ヘレン・コレイン
▶︎目次
1 難破
2 救命ボート
3 ジャングルで
4 捕らえられて
5 ハウス収容所
6 『とらわれ人の讃美歌』
7 バラック収容所
8 ヴォーカル・オーケストラ
9 それぞれが自分で……
10 埋葬
11 解き放たれて
12 歌の力
▶︎著者プロフィール
ヘレン・コレイン(Helen Colijn)
1920年にイギリスで生まれ、母国オランダで育つ。祖父ヘンドリック・コレインは元オランダ首相。
1839年にハーグの高校を卒業し、石油会社勤務の父の任地オランダ領東インド(現インドネシア)に家族を訪ねる。直後に第二次世界大戦が始まりオランダがドイツに占領され帰国できずに、1942年3月にジャワ島で日本軍の侵攻にあう。避難船が撃沈され、救命ボートで漂着したスマトラ島で女性収容所に入れられ、妹2人と「ヴォーカル・オーケストラ」の音楽を支えに生きる。
1945年8月に解放されるが、父を男性収容所で失い、母と妹2人とアメリカへ渡る。カリフォルニアで語学教師、翻訳者、雑誌記者として働き、著書に『オランダ風』『オランダの背景』(未邦訳)がある。
2001年6月からオランダのヘイノに住む。2006年没。
▶︎訳者プロフィール
西村由美(にしむら ゆみ)
福岡県に生まれる。東京外国語大学英米語学科を卒業。オランダ滞在を機にオランダ語を学び、外務省研修所などでオランダ語を教える。現在は児童文学を中心にオランダ語作品の翻訳に携わる。
主な訳書にアニー・M・G・シュミット『ネコのミヌース』『パン屋のこびととハリネズミ』(徳間書店)、『イップとヤネケ』『ペテフレット荘のプルック』、ヤン・デ・レーウ『15の夏を抱きしめて』(岩波書店)、トンケ・ドラフト『王への手紙』『白い盾の少年騎士』『ふたごの兄弟の物語』『七つのわかれ道の秘密』『青い月の石』、テア・ベックマン『ジーンズの少年十字軍』、ヤニー・ファン・デル・モーレン『かくれ家のアンネ・フランク』(以上、岩波少年文庫)など多数。