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山のひと山の本

岳人岳書録

著者:雁部貞夫


ジャンル:エッセイ/登山
四六判変型(タテ188mm×ヨコ118mm) 上製本 286頁
定価:本体2,500円+税
ISBN 978-4-89618-054-1 C0095
2008年12月16日発行
装幀:菊地信義
装画:上田哲農


ヒマラヤの登山家にしてアララギの歌人による、軽妙洒脱な岳書談義。深く感動し、いまも命ある作品たちをいとおしむ心と、親しく交わり、いまは亡き人びとへの思いが寄りそい合って、そこはかとない山への香気をただよわせる。取り上げられた「山」の著述家は74人。山岳雑誌「岳人」に24回にわたって連載した「岳人岳書録」を集成。限定100部の特装版もある。

「まえがき」より
 『日本百名山』(1964 新潮社)を読み、そこに記載されている100の名山の頂を踏破した深田久弥ファンにして、もうひとつの代表作『ヒマラヤの高峰』を読破した人は、おそらく100人に1人ぐらいの割合であろう。これが長い間、ヒマラヤ登山とヒマラヤ関係の書物の出版に関わってきた私の実感である。
 日本に近代的な山岳会が誕生してから100年、深田の存在に比肩しうる山の著述家は少なからず存在する。
 山の世界に多くの人が戻ってきたといわれる現在、そうした山岳書の古典とそれを生み出した人の存在に少しでも触れてもらいたい。豊潤な読書の世界がそこに開かれているのだということに気づいてほしいと願わずにはいられない。

▶︎目次より

秋谷豊――詩人の目に映るヒマラヤ

畦地梅太郎―― 一服の清涼剤

東 良三――不遇な先覚者

麻生武治―― 一代の快男児

足立源一郎――画家の目が光る

猪谷六合雄――雪を求めて転々と

石 一郎――ママリーの名著を初訳

石岡繁雄――五臓六腑をさらけ出す

石川欣一 ――可愛くてならぬ山

石橋辰之助――記念碑的な山岳俳句集

泉 精一 ――済州島での遭難が転機

板倉勝宣――立山スキー登山に死す

伊藤秀五郎――静観派の代表

伊藤洋平――初期「岳人」に貢献

井上 靖――山岳小説の枠を破る

茨木猪之吉――山間僻地を旅して描く

今井雄二・今井喜美子――共著に込めるよき時代の味わい

今西錦司――世界的な才能が周囲に結集

岩科小一郎――民俗研究で登山のバックボーンを築く

上田哲農――死を意識して山と対峙

梅棹忠夫――今西学校の優等生

浦松佐美太郎――イギリス仕込の良識を支えに

瓜生卓造――山の早稲田派

大島亮吉――「谷川岳は近くてよき山なり」

大谷光瑞――西カラコルムの山岳美を規範に

岡 茂雄――書格の高い山岳書を出版

など(以下、50音順で掲載)


▶︎著者プロフィール
雁部貞夫(かりべ さだお)
1938年、東京に生まれる。1961年、早稲田大学卒業。ヒマラヤン・クラブ会員。日本山岳会会員。1966年、ヒンドゥ・クシュ主稜でパキスタン側から日本人初の登山活動を行ない、サラグラール峰(7349メートル)山群とブニ・ゾム(6551メートル)を試登した。さらに68年夏、当時未踏峰のヒンドゥ・ラジ山脈の最高峰コヨ・ゾム(6889メートル)に試登し、同峰の東のイシュペル・ドーム(約6200メートル)とフラッテロ・ゾム(約6200メートル)に初登し、その後十数度これらの山域を踏査した。
近年はヤルフーン河原流域を踏査し、1997年と2003年の夏、ヒンドゥ・クシュ山系の最大の氷河、チアンタール氷河(全長約35キロメートル)を縦断し、未踏の六千メール峰を多数撮影して多くの資料をもたらした。また、学生時代から「アララギ」会員として作歌活動を続け、1997年に終刊した「アララギ」の後継誌「新アララギ」の編集委員、選者を務める。
主な著書、編著書に、『ヒマラヤの高峰』(深田久弥著 1973 白水社)、『ヒマラヤ名峰事典』(1996 平凡社)、『カラコルム・ヒンズークシュ登山地図』(2001 ナカニシヤ出版)、『岳書縦走』(2005 同)ほかがあり、訳書にR・ショーンバーグ『異教徒と氷河』(1976 白水社)、S・ヘディン『カラコルム探検史』(1980 同)がある。