著者:松村恵里
ジャンル:文化人類学/地域研究/染織
A5判(タテ210mm×ヨコ148mm) 上製本 324頁(カラー口絵32頁)
定価:本体4,600円+税
ISBN 978-4-89618-063-3 C3072
2016年2月25日発行
装幀:菊地信義
広大なインドの小さな町でつくられる伝統工芸としての布、カラムカリ。その布のつくり手たちは、自らを「アーティスト」と名のる。カラムカリは19世紀頃から寺院に掛けられる布として伝わり、20世紀半ば、政府の手工芸振興策によって、からくも消滅を免れた。技術を継承する製作者たちは、カーストや帰属が混在し、女性が参入し、技術的差異が広がって、多様化が進む。
師のもとで修業に励むかたわら著者は、彼らの語りに耳を傾け、つくる身体に生成された意識を追い、つくり手としての座標を解き明かす。研究者であるとともに、友禅のつくり手でもある著者は、その独自性を生かして、モノづくりにおいて「続けられる」とはどういうことかという根源的な問いを考察する。
▶︎目次
はじめに 003
序 017
1 本書がめざす射程 018
2 製作現場とカラムカリの概要 022
3 インドにおける手工芸開発の変遷 033
4 染織研究からモノを扱う研究へ 036
5 調査方法と本書の構成 044
Ⅰ 手工芸開発について 049
1 1950年代の手工芸振興の役割 050
2 カラムカリ・トレーニングセンター閉鎖と以後の変遷 055
カルナ・プロジェクト 059
任意団体のNGO化 063
手工芸開発における有資格団体との連携 068
デザイン開発の貢献と問題点 072
Ⅱ カラムカリ技術 079
1 「伝統的」技術習得過程 080
工程面における技術 080
デザイン面における技術 102
デザイン比較 131
2 技術習得における変化 141
工程面の技術変化 141
デザイン面の技術変化 144
3 つくる側にとっての「伝統性」 150
「カラムカリ・スタイル」と「モダン・スタイル」 150
「カラムカリ・スタイル」の恩恵と淘汰 154
Ⅲ 製作者の多様化とその分類 159
1 技術習得状況と製作者の多様性の関係 160
技術習得状況における製作者の分類 160
技術習得状況と技術レベル、および就業形態の関係 167
2 女性製作者の多様化 175
製作者のもとで修業した女性製作者たち 175
非製作者経営のユニットで訓練した女性製作者たち 180
他者評価から自己評価へ 184
Ⅳ つくり手としての自己認識の生成 189
1 手工芸への西洋美術概念の波及と「インドらしさ」の見直し 190
2 カラムカリ製作者の自己表象の選択 200
カーラハスティ外部での「アーティスト」の捉え方 201
カーラハスティ内部での「アーティスト」の捉え方 210
3 製作者意識の鍵概念――「創造力・想像力」「宗教性」 227
4 自己認識の生成過程 244
結び 254
表8 カラムカリ製作者一覧 258
註 278
おわりに 297
▶︎著者プロフィール
松村恵里(まつむら えり)
1967年石川県生まれ。染織を学んだ後、友禅作家押田正義、二塚長生(重要無形文化財)に師事。金沢大学人間社会環境研究科博士後期過程終了、博士(社会環境学)。現在、金沢大学国際文化資源学研究センター・特任助教
(略歴は刊行時のものです)